この記事では「血液培養の手順と注意しておきたいポイント」と「結果の見方」について解説しています。
- 今日、初めて血液培養を見学したから振り返りたい
- 苦手意識を持っている
- 血液培養を採取したけど結果がよくわからない…
という看護師さんにわかりやすく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
Contents
そもそも血液培養をする目的は?
受け持ち患者さんが39.0度と急な発熱をした。
このような場合、医師に報告すると血液培養の指示があると思いますが、そもそも検査をする目的ってなんだと思いますか?
血液の中は、もともと菌がいる痰や便などとは違って通常無菌状態です。しかし、カテーテル感染や尿路感染など、何らかの原因で血液中に菌が入ってしまうと重篤な状態(敗血症)になってしまう危険性があります
その原因となる菌の正体や弱点となる抗菌薬を知ることが血液培養の目的です。
血液培養を行う前に注意しておきたいポイント
では、血液培養の手順の前に知っておかなきゃいけないポイントについて覚えておきましょう
抗菌薬を投与する前に採取
例えば敗血症が疑われる場合、必ず血液培養とセットで抗菌薬投与の指示がでます。それは、感染を引き起こしている菌が何かわからないけれど、とりあえず多くの菌に効果がある抗菌薬を投与し敗血症の悪化をくいとめるためです。
敗血症であれば1時間以内に投与することが推薦されているので、血液培養より先に抗菌薬を投与したほうがいいのでは?と思いませんか?
しかし、血液培養を行う前に抗菌薬を投与してしまうと原因となる菌の特定が難しくなってしまいます。
菌の正体を知って適切な抗菌薬を選択するためにも
「必ず投与する前に採取」
コンタミネーションに注意
私達の皮膚にいる常在菌が、血液培養の中に混入し増殖してしまうことをコンタミネーションといいます。
このコンタミネーションが起きてしまうと、感染症を引き起こしている起因菌なのか、それとも皮膚にいた常在菌が混入してしまっただけなのか区別がつかなくなってしまいます。
コンタミネーションを防ぐには消毒をしっかり行い皮膚常在菌の混入を避ける。これが大事なポイントになります。
血液培養は2セット
同じ血液の中なんだから1セットでいいのでは?と思うかもしれませんが、血液培養は基本2セットになります。
その理由は2つ。
- 検出率に違いがある
- コンタミネーションの判断材料となる
菌の検出率が違う
~検出率~
・1セットの場合 73.2%
・2セットの場合 93.9%
・3セットの場合 96.9%
つまり、1セットだと原因となる菌を見逃してしまう可能性があるので2セットとるのが基本となります。
コンタミネーションの判断材料となる
2セット採取するもう1つの理由としてコンタミネーションです。
【1セットの場合】
例えば、1セットしかしていない血液培養から皮膚にいる常在菌が検出された場合、それが皮膚から混入したのか原因菌なのか判断が難しい
【2セットの場合】
違う部位から2セット血液培養を行いどちらとも同じ菌が検出されれば本物の原因菌と断定できる
逆に、2セットのうち1セットのみ常在菌が検出されて、もう1セットは陰性であればコンタミの可能性が高い。
つまり、菌の検出率やコンタミネーションを考えると2セット採取するのがベストということなんですね。
ボトルに入れる順番
血液培養は青のボトル(好気用)とオレンジのボトル(嫌気用)の2種類を使用します。
青 好気性菌
生きるために酸素を必要する菌を培養する(酸素が好き)
オレンジ 嫌気性菌
生きるために酸素が必要ない菌を培養する(酸素が嫌い)
では、どっちから入れるのが正解か?
オレンジ(嫌気用)→青(好気用)
の順番です。
その理由は、嫌気性菌は酸素に触れると菌が死んでしまうから。シリンジに残った空気が培養ボトル内に入ってしまうと嫌気性菌が培養できなくなってしまいまうのです。
できるだけ同じ腕からの採取は避ける
血液培養は基本2セットと説明しましたが、採取する部位も2ヶ所にしなくてはなりません。
その理由は、やはりコンタミネーション。
左右の腕から採取できるのが理想ですが、採血困難な場合は下肢だったり医師が鼠径部から採血したりもします。
ただ、鼠径部はコンタミのリスクが高いと言われているので、できれば避けたい部位。
ということで
左右の腕から1セットずつ採取。
△許容範囲
片腕と片足から1セットずつ。もしくは、同じ腕でも血管が違う場所。
同じ部位から採取したのを2セットにわける。
という具合ですかね。
あと、よくあるのが両腕でから採取したいけど片腕は点滴してるからできない…
こんなケース。
この場合は、点滴側から採取していいか医師に確認してみましょう。
血液培養の実際の手順
- 血液培養ボトル2セット
- シリンジ20cc 2本
- 22G針 直針or翼状針
- アルコール綿(多めに)
- ポピヨンヨード
- 手袋(滅菌でも可)
- 駆血帯
- 止血テープ
- 針捨てBOX
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STEP1採血部位を決めて消毒採血量が多いので、なるべく太くて弾力のある血管選択が理想。
アルコール綿で広範囲をしっかり消毒。次に、ポピヨンヨードで穿刺部位を中心に消毒し乾燥を待つ(最低30秒)
ポピヨンヨードを使わず、アルコール綿2回の消毒でもコンタミネーションの割合は変わらないと研究結果があります。
ponpokoまぁ、アルコール綿+ポピヨンヨードでがっつり消毒するのがベターでしょうね。 -
STEP2採血の準備ポピヨンヨードの乾燥を待つ間に、シリンジの準備や血液培養ボトルのゴムをアルコール綿で消毒しておきます。
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STEP3穿刺ここは清潔操作が大事なポイント
穿刺部位に触れない
針に触れない
抜針するときアルコール綿に針が触れないこれに気を付けましょう。
あと、よくあるのが消毒した後に穿刺部位がわからなくなってしまい不安になること。そういった場合は、滅菌手袋をつければ穿刺部位を触れて確認してもOKです。
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STEP4血液培養ボトルに注入抜針後は針を変える必要はなく、その針のままオレンジ→青のボトルの順に必要量を分注しましょう。
~必要量~
青のボトル 8〜10ml
オレンジのボトル 8〜10mlもし、必要量がひけなかった場合は、最低3mlからでも検査できるそうですが、菌の検出率は下がるので8~10mlの採取が望ましい。
2セット目も同じ手順で行っていきます。
手順は以上ですが、清潔操作でコンタミネーションを防ぐことが大事なポイントですよ。
血液培養の結果の見方
検査科から
「◯◯さんの血液培養からグラム陽性球菌が陽性がです」
このように報告をうけたとしても、グラム陽性球菌って??となりませんか。
ここからは、血液培養の結果について私がわかる範囲内で解説していきたいと思います。
塗抹結果を見てみよう
まずグラム染色(塗抹検査)で菌を分類し4つに分けられます。
球菌 | グラム陽性球菌 (GPC) |
グラム陰性球菌 (GNC) |
桿菌 | グラム陽性桿菌 (GPR) |
グラム陰性桿菌 (GNR) |
あっダメだ…微生物って苦手だしもうめまいがしてきた…と思っているあなた。
この中でもグラム陽性球菌とグラム陰性桿菌がメインとなるので、まずはこの2つを覚えておけば大丈夫。
このグラム染色の時点で、検査科から「◯◯さんの血培よりグラム陽性球菌が(+)です」と中間報告がきます。
培養結果を見てみよう
菌のグループがわかったら、今度はその中の誰が犯人なのかを特定していきます。
まず、グラム陽性球菌を見てみましょう。
グラム陽性球菌は主に皮膚や肺など横隔膜より上を縄張りにしている菌であり、その中でもブドウ球菌とレンサ球菌に分けられます。
ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌(S. aureus) ・MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) ・MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌) CNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌) |
レンサ球菌
・肺炎球菌(S. pneumoniae) ・溶連菌(Streptococcus) ・腸球菌(Enterococcus spp) |
次は、グラム陰性桿菌。
これは、主に尿路や消化器系など横隔膜より下をなわばりにしている菌です。
・大腸菌(E coli) ・セラチア(Serratia) ・プロテウス(Proteus) ・エンテロバクター(Enterobacter) ・緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) |
あと、忘れてはいけないのがカンジタ(Candida albicans)ですね。
あくまでも一部ですが、このようにどのグループのどの菌が原因なのか塗抹結果からわかり、犯人を特定することができるのです。
感受性結果を見てみよう
犯人がわかったら、その菌の弱点となる抗菌薬が感受性結果からわかります。
抗菌薬の横に「S 、R、I」 とアルファベットが並んでいると思いますが、これが原因となる菌に対しどの抗菌薬なら効果があるのかを示しているのです。
S(感性) | 効果が期待できる |
---|---|
I(中間) | 特定の条件下によっては効果が期待できる |
R(耐性) | 効果が期待できない |
例えば、血液培養よりMRSAが検出されVCMがSであれば「バンコマイシン」が弱点となりますので、今まで使っていた抗菌薬を切り替えます。
逆に全ての抗菌薬がRであれば、どれも効かない多剤耐性菌というやっかいな菌ということになり、院内感染に徹底しなければなりません。
これってコンタミ?それとも原因菌?
血液培養の結果が陽性だったけど、これって原因菌?コンタミネーション?の考え方についても少し触れておきます。
- CNS 表皮ブドウ球菌
- コリネバクテリウム
- バチルスセレウス
- アシネトバクター
これらの多くは人の皮膚にいる常在菌です。
例えば、血液培養の結果で「CNS」が検出されたとしましょう。
コンタミの可能性
原因菌と考えられる
ということです。
- 肺炎球菌
- 黄色ブドウ球菌
- 溶連菌
- 大腸菌
- 緑膿菌
- カンジタ
- グラム陰性桿菌のほとんど
これらの菌が2セット中1セットでも検出されたら原因菌の可能性が高い。
このようにして、コンタミネーションなのか原因菌なのかを判断していくそうです。
まとめ
今回は血液培養の手順と結果の見方を解説してみましたが、少しはイメージできましたか?
血液培養は菌の正体と弱点を知ることが大きな目的です。
そのため、清潔操作をしっかり行いコンタミネーションを防ぐことが1番重要になります。
採血に比べると難しそうと感じると思いますが、解説したポイントをしっかりおさえれば大丈夫ですので頑張ってください。