患者さんにとって手術というのは初めてのことばかりで多くの不安を抱えています。
患者さんが安心して手術に臨めるようにするには、看護師が行う術前オリエンテーション(オペオリ)が重要な役割を担っています。
この記事では
- 術前オリエンテーションの目的
- 実際に説明する内容
- オリエンテーションする際の留意点
について解説していきたいと思います。
Contents
術前オリエンテーションの目的
術前オリエンテーションは、手術に対する情報を患者さんやその家族に提供することが目的です。
そして、オリエンテーションを行うことで以下のような効果を期待します。
- 手術の流れが具体的にイメージできる
- 手術に対する不安の軽減
- 術後合併症の予防につながる
手術の流れが具体的にイメージできる
手術前にどんな処置をするのか?術後はどんな状態になるのか?いつ頃から食事が食べられるのか?退院はいつごろになるのか?
このように、患者さんは手術に対して漠然としたイメージしかありません。
また、手術内容や合併症については医師からのIC時に説明されていますが、ちゃんと理解していない患者さんも多くいるのも事実です。
看護師が手術の流れを具体的にイメージできるようわかりやすく伝えることで、患者さんが手術に対する心構えができてきます。
手術に対する不安の軽減
「どのくらい痛いのかな…痛みに弱いから耐えられるか…」
「目が覚めなかったらどうしよう…」
このように、患者さんは手術に対して様々な恐怖を感じ不安に思っています。
特に、痛みに対して不安に感じていることが多いです。
「手術後は点滴のところから少量ずつ痛み止めを流していきますよ」とIVーPCAのことを説明したり
患者さんは、我慢できなくなったら痛み止めを使うと認識されていることが多いので
「痛みが出てきた段階で積極的に痛み止めを使用するから遠慮せずに教えてくださいね」
と伝えることで安心されることが多くあります。
こういった情報を提供して不安の軽減につなげるのもオリエンテーションの大事な役割なんですよ。
術後合併症の予防
術後合併症を予防するためには、患者さん自身にも理解してもらい協力を得ることが必要になります。
呼吸器合併症の予防であれば、禁煙やトライボールによる呼吸訓練、痰の出し方や深呼吸など指導することが必要になります。
また、「術後は安静にしてたほうが傷の治りがいいんでしょう」と思っている人もいるため、早期離床することで様々な合併症を予防することができることも説明していきます。
術前オリエンテーションの内容
オリエンテーションする内容は病院によって多少の違いはあると思いますが、私の病院で行っている内容を簡単に紹介したいと思います。
- 手術の日程や時間
- 必要物品
- 食事について
- 術前処置
- 呼吸訓練
- 活動の制限について
- 手術当日の流れ
- 術後の様子は経過
大きくわければこんな感じです。パンフレットや患者用パス、動画などを使用して行っていきます。
中でも⑧の術後の様子や経過に対して患者さんは不安に感じていることが多く、特に重要な部分であると私の経験上から思いますので丁寧に説明したほうがいい部分です
入室から退室までの流れについては、手術室看護師の術前訪問のときに説明します
術前オリエンテーションの留意点
では、実際に術前オリエンテーションを行う際の留意点について説明します。
なぜ必要なのかを具体的に説明する
以前、私の受け持っていた患者さんが手術30分前にコーヒーを飲んでしまった事例です。
私はオリエンテーションの中で水分は2時間前までと説明はしていたのですが「ちょっとだけなら大丈夫だろう」と思いコーヒーを飲んでしまいました。手術という不安で気持ちが落ち着かず毎日の習慣であるコーヒーを飲んでしまったそうです。
必要性を具体的に説明できていなかったのが原因でした。
つまり、飲んではいけないことはわかっていても「なぜダメなのか?」まで説明する必要があるということです。
明日の9時から手術になりますので、食事は今日の夕食までです。もし、食べてしまうと最悪手術が延期になってしまう可能性がありますので、食べないようにお願いします。
水分は当日の7時までになります。
明日の9時から手術になりますので、食事は今日の夕食までです。
もし食べてしまうと、麻酔をかけて気管内に管を入れる際に吐いてしまい肺炎になってしまう可能性があります。
そのため胃の中を空にしておく必要があるので、夕食以降は何も食べないようにお願いします。
水分は当日の7時までであれば飲めますが、果肉の入っているジュースや甘いコーヒーなどは飲まないでください。安全のためにも水かお茶でお願いします。
このように、なぜ必要なのか?をより具体的に説明することを意識してみましょう⇒これマジで重要
患者さんの理解度を確認する
手術を安全に行うためにも患者さんに説明することが山ほどあります。
そのため、説明したことに対し患者さんが理解できているか確認することも重要になります。
「今まで説明したところで、不明な点はありますか?分かりにくい内容はありましたか?」
このように、一気に説明せずに理解できているかを確認しながら進めていきましょう。
特に、高齢の患者さんなどは説明した時は理解していたとしても、時間が経つと忘れてしまっていることも多々ありますし、手術に対する不安や恐怖から精神状態が不安定になっている患者さんもいます。
もし、理解が乏しいような場合はスタッフ間で情報を共有して未然に防ぐことも必要になるし、事細かく説明せずに大事な要点だけを抽出して伝えるだけでいいときもあります。
理解度を確認しながら個々に合わせて指導することを意識してみましょう。
他職種間で情報を共有する
術前オリエンテーションは病棟看護師だけが行うわけではありません。
手術室看護師は入室から退室までの流れをオリエンテーションを行います。麻酔科医も安全に麻酔をかけられるように情報を収集し説明します。点滴や抗生物質に関しては薬剤師が説明します
このように、他職種が関わることで「◯◯さんこれが不安だったんだ」と新たな情報を得ることも結構あります。
様々なスタッフが役割分担をしながら情報を共有することで、安全かつ安心して手術に臨むことができるようになるということです。
一度オリエンテーションしたら終わりではない
「よし、一通り説明が終わったし患者さんも理解してそうだから大丈夫だろ」
ではありません。
やはり、どれだけ具体的に説明しても、その時は理解していても忘れてしまいまうことは誰だってあります。わかっていてもめんどうだからやらない患者さんもいます。
・呼吸訓練のトライボールを行っている感じがなければ声をかけて促す。
・禁食の時間になったら再度声をかける
・怪しいならコップを看護師サイドで預かってしまう
一度オリエンテーションしたら終わりではなく、場面場面においてその都度声をかけていくことが何よりも大切になります。