術後に発熱することはよくありますが、その発熱は正常なのか異常なのかアセスメントできていますか?
熱や炎症反応だけみるんじゃなくて、術後何日目なのか?熱源となる兆候はあるのか?を観察することが大切だからね
では、今回は術後に起きる発熱の種類や特徴についてみていきましょう。
術後に起きる発熱の種類
術後の熱発にはいくつかの種類があります。
- 侵襲熱
- 吸収熱
- 薬剤熱
- 感染熱
侵襲熱
手術により組織が破壊されると手術部位に炎症が起きます。それによってサイトカインが産生されることで起きる発熱のこと
侵襲が大きいほど高熱になりやすく、術後2〜3日で解熱することが多い。
関連記事吸収熱
手術部位から出る滲出液や出血、壊死組織を体が吸収するために起きる発熱
術後48時間以内にピークとなって、その後解熱していくと言われている。
薬剤熱
主に抗菌薬が原因で起こる発熱。
熱以外の症状があまりなく、疑わしい薬剤を中止してから72時間以内に解熱すると言われている。
感染熱
術後に何らかの感染が原因で起きる発熱。
手術部位感染(SSI)であれば、術後比較的早い段階から起きることもあるし、1週間くらい経過してから起きることもある。
肺炎や尿路感染、カテーテル感染などの遠隔部位感染は様々な時期に起きる。
・術後合併症その⑥「手術部位感染(SSI)と観察のポイント」
実際の術後に発熱した事例
事例①
急性胆嚢炎にて腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)
喫煙歴あり 20本/日
術後は痰多いが自己排痰できている
SPO2 97〜98% ルームエアー
胸部XP 無期肺 肺炎像なし
創部感染兆候なし。
胆のう床ドレーン 排液は淡血性〜淡々血性
術後の発熱の推移
採血結果(炎症反応のみ)
WBC | CRP | |
術直後 | 5200 | 0.04 |
術後1日目 | 6500 | 0.27 |
術後3日目 | 4100 | 2.38 |
この事例は、術後1日目に最高37.6℃の発熱があり炎症反応も軽度上昇しているが、術後3日目には解熱し、WBCは下降しているのでCRPも今後ピークアウトすることが予想できます。
喫煙歴あるため痰が多いが、呼吸状態も安定しており無期肺や肺炎の所見もなし。創部トラブルもなくドレーンの排液も正常である。
つまり、この事例は侵襲熱や吸収熱など手術侵襲に伴う発熱が考えられるということです。
発熱や炎症反応だけでなく、術後の日数や感染の兆候など様々な視点からアセスメントするのが大事ですね
事例②
胃癌にて腹腔鏡下胃全摘術(LATG)
胸部XPで無気肺、肺炎像なし
ウィンスロー孔、左横隔膜下ドレーン性状は問題なし。
創部感染兆候なし
術後の発熱推移
採血結果(炎症反応のみ)
WBC | CRP | |
術直後 | 7600 | 0.13 |
術後1日目 | 10700 | 7.32 |
術後3日目 | 7900 | 11.76 |
術後当日に最高38.3℃の発熱があり、炎症反応も上昇しているが3日目には解熱。WBCは下降しているのでCRPはピークアウトしていくと予測はできます。
呼吸器合併症もなく、創部トラブルもなし。ドレーンの性状からも縫合不全や膵液瘻を疑う感じもなし。
となると、これも手術侵襲に伴う発熱の可能性があり、事例①よりも熱や炎症反応が高いのは胃全摘という侵襲の大きさによるものと考えられます。
ただ、これが遷延したり再度発熱するとなると何らかの原因を考えなくてはなりません。
事例③
穿孔性虫垂炎と汎発性腹膜炎にて開腹虫垂切除術
術後6日目までは体温も安定していたが、術後7日目の朝に発熱。創部に発赤や疼痛はなく膿性の滲出もなし。
CTにて腹腔内膿瘍あり、これが原因で発熱した事例でした。
このように、術後日数が経過してからの発熱は何らかの感染に伴う発熱の可能性があるということです。
術後の発熱=感染ではない
手術侵襲に伴うものなのであれば、術後の経過とともに発熱も炎症反応も低下していきます。
逆に、術後5日になっても解熱しなかったり、炎症反応も下降せずに遷延するなどがあれば何かの感染を考えなくてはなりません。
今起きている発熱が正常な反応なのかどうかは、術後の日数、発熱や炎症反応の遷延、呼吸の増加、創部の疼痛、ドレーン排液の性状などを観察してアセスメントすることが重要なポイントです。