術後の観察で医師や先輩看護師に必ずと言っていいほど
「尿量はどれくらいでてる?」
と聞かれますが、実際にどのくらいでていればOKだと思いますか?
この記事では
・術後の尿量はどれくらいでていればいいのか?
・尿量が少ない場合の観察のポイントと輸液
について解説していきます。
術後の循環動態を評価するにあたり、めちゃくちゃ大事な観察ポイントですのでしっかり覚えておきましょう。
Contents
術後の尿量はどれくらい必要?
尿量=0.5ml〜1ml/kg/h
1時間に体重あたり0.5〜1mlの尿量が必要と言われています。
例えば、体重が60kgの患者さんなら最低でも1時間に30mlの尿量がでていいなくてはなりません。この患者さんの術後のバイタルチェックで3時間で250mlの流出があったなら、時間80mlなので尿量は確保できているという判断になります。
尿量は術後の循環動態の指標となる
術後は、手術中の出血や不感蒸泄、サードスペースへの水分移行によって循環血液量が減少し急性腎不全やショックなど重大な合併症を引き起こす可能性があります。
これらを予防するためには、循環血液量の減少を見逃さないように観察しなくちゃいけません
そこで重要になるのが尿量
尿は腎臓に流れた血液が糸球体で濾過され生成されますが、循環血液量が減ると腎臓に流れる血液も低下し尿が作られなくなってしまいます。
尿を作るためには「最低でも60mmHg以上の血圧が必要」と言われており、逆を言えば、血圧が60mmHg以下では尿は全く作られないということです。
尿量が0.5〜1ml/h/kgを維持できていれば循環動態はとりあえず維持できているという指標になるんだよ。
サードスペース
最近はサードスペースを重要視しない傾向にありますが、少し触れておきましょう。
手術によって侵襲が加わった部位はサイトカインによって炎症が起きます。そうすると、血管壁の隙間が広がり(血管透過性の亢進)、水分やNaが血管の外に漏れ出してしまい血管内が脱水状態になります。
その漏れでた部分(血管内でも細胞内でもない)ところにどんどん水分がたまっていき浮腫が起きるのですが
この部分をサードスペースと呼びます。
炎症が落ちついてくると、今度はサードスペースにある水分やNaは血管内に戻ってくるんだ。
これを利尿期(リフィリング)といいます。
サードスペースにあった水分が血管内に戻ってくるので、この時期は一時的に尿量が増加します。
侵襲の程度にもよりますが、利尿期はだいたい術後2〜3日くらい、早いと術後1日目に利尿期になることもあるそうです。
実際に尿量が少なかったらどうすればいい?
ポイントは循環血液量が減少して血管内脱水なのか?それとも、循環血液量は維持できているのに十分な尿量が確保できていないのか?そこを観察することが重要です。
尿量が体重あたり0.5〜1ml/hを維持できているか
尿比重が高くないか
(基準値) 1.002〜1.030
高い→ 循環血液量が減少し血管内脱水が考えられる
低い→ 循環血液量は保てていると考えられる
術中、術後のin/outバランス
CVP圧
CVカテーテルが挿入されていれば測定。
(正常値)5~10cmH₂O
5cmH₂O以下→循環血液量の減少が考えられる
10cmH₂O以上→循環血液量の過剰が考えられる
平均動脈血圧(MAP)65mmHg以上
臓器灌流量を知ることができる
血管内脱水の症状
(意識障害、頻脈、血圧低下、呼吸数増加、口腔粘膜の乾燥、ツルゴール低下)
尿量が少ないときどんな輸液をする?
では、主治医から尿量が少ないから輸液をしようとなった場合、どのような薬剤を選択するのかについても触れておきましょう。
リンゲル液
リンゲル液は、細胞外液の電解質濃度とほぼ同じであり、投与すると細胞内には輸液が移動せずに細胞外(血漿と間質)にとどまるので、循環血液量が増加します。
(乳酸リンゲル液) ラクテック
(酢酸リンゲル液) ソルアセトF
(重炭酸リンゲル液) ビカーボン
まず、第一選択でリンゲル液の投与が多い。
アルブミン
リンゲル液を投与しても尿が少ないときに、アルブミンを使うことがあります。
アルブミンには血漿と同じ濃度(4.4%と5%)の等張性と高濃度(20%と25%)の高張性のアルブミンがあります。
- 等張性のアルブミンは、血管内の水分を逃がさないように保持してくれる(血漿浸透圧の維持)
- 高張性アルブミンは、濃度が高いので血管外にある水分を血管内に引っ張ってくれる(膠質浸透圧)
私の病院の外科Drは開腹手術など侵襲が大きく尿量が少ない場合、サードスペースに逃げた水分を20%アルブミン(高張性)で血管内に戻す指示を出すことがあります。
ラシックス
尿比重は高くないが十分な尿量が確保できていない場合、補液で負荷をかけると血管内の水分が多くなってしまい、前負荷によって肺水腫や心不全といった合併症のリスクがあります。
そういったときは、ラシックスを使用して尿量を確保することをします。
まとめ
術後の循環血液量が維持できていると判断するためには、尿量が0.5〜1ml/kg/hを維持できているか?も大切ですが、それ以外に血管内脱水の兆候も合わせて観察することが重要です。