術後合併症でも頻度の高い無気肺(アテレク)
無気肺ってなんだ?
気力が無くなった肺ってことでしょ?つまりやる気が無いってこと
ということで…今回の内容は
- 術後に無気肺がなぜ起きるのか?
- 起きやすい患者さんは誰だ?
- 予防するために看護師ができることは?
について解説してきましょう。
無気肺ってなに?
無気肺とは、気管支が何らかの理由(気道内分泌物など)で閉塞してしまい、そこから先に空気が送られなくなる状態のことを言います。
空気が送られない部分の肺胞は虚脱してしまい正常なガス交換が行われません。ということは、酸素化できない静脈血のまま体循環に戻ることになってしまいますよね?
これを「シャント」といって、これが増加すると酸素化障害が起きてしまいます。
多少の無気肺では全く症状がないこともあるけど、広範囲であればSPO2も低下して呼吸困難の症状がでてくる。
そして、この無気肺の状態が続いてしまうと細菌が繁殖し肺炎になってしまうので、術後は無気肺の予防と対策が重要になります。
手術によってなぜ無気肺が起きるのか?
主に「手術による影響」「患者自身による影響」が原因となって無気肺を起すと言われています。
手術による影響
全身麻酔
吸入麻酔薬による刺激や挿管チューブによる機械的刺激によって気道内分泌物が増え、麻酔による呼吸抑制も加わり痰の喀出が不十分となってしまい無気肺を起す原因となってしまいます。
手術体位
多くの手術が仰臥位で行いますが、仰臥位のまま人工呼吸器管理をしていると、血流は背中側へ多くなり、換気は胸側に多くなるため換気血流不均衡という状態になってしまいます。
また、重力によって下側肺(背中側)に痰が移動し貯留するため、肺胞が虚脱して無気肺が起こりやすくなります。
術後疼痛
術後は疼痛による咳嗽の抑制によって痰の喀出が不十分になってしまいます。
それだけでなく、痛みによって離床ができないと横隔膜の動きも制限されてしまい、無気肺のリスクが増してしまいます。
特に、胸部や上腹部の手術など横隔膜に近い部位の手術では無気肺が高い確率で起きやすい。
患者自身による影響
喫煙←超重要
タバコに含まれるニコチンは気道内分泌物を増やし、タールは絨毛の運動を低下させてしまうため痰が溜まりやすくなってしまいます。
喫煙している人が全身麻酔の手術を受けた場合、喫煙していない人に比べて術後の痰の量がめちゃくちゃ多くなるので禁煙は必須です。
8週間前よりの禁煙が推奨されているが、緊急手術などの場合は厳しいですね。
70歳以上の高齢
高齢になると肺機能が低下し痰の喀出も弱くなるのでリスクとなります。
肥満
肥満な人は肺は潰れやすく膨らみにくくなるためリスクが増す。
BMIが30以上は注意
低肺機能
・既往にCOPD
・スパイロにて1秒率が70%以下、%肺活量が80%以下
・ヒュージョーンズ分類Ⅲ以上
では、術後に呼吸器合併症のリスクが高い。
*ヒュージョーンズ(Hugh-Jones)の分類でのⅢは「平地でさえ健常者なみに歩けないが自分のペースでなら1.6km以上歩ける」
例えば、こんな患者さんが手術予定であると…
70歳 男性 胃癌
BMIは35
全身麻酔下にて胃全摘手術。
喫煙歴あり1日40本、手術1週間前まで喫煙していた
スパイロにて閉塞性障害
術後の無気肺や肺炎のリスクが高いということです。
関連記事無気肺が出現しやすい時期
無気肺は術後3日以内に起こりやすく、肺炎は7日前後に起きることが多いと言われています
私が消化器外科にいた頃も、侵襲の大きな開腹手術をした患者が術後1日目のレントゲンで無気肺になってたことが度々ありました。
患者さんにとって1番辛い時期だからこそ起きやすいのだろうし、それを予防するためにも何をすればいいのかが大切ということだよ
術後の無気肺を予防するための看護
無気肺を予防するためには
- 早期離床
- 排痰の援助
- 疼痛コントロール
この3つが重要です。
早期離床
安静臥床というのは肺の換気が悪くなるので、できる限り早期離床を行い肺を拡げて換気を良くすることが重要です。
離床の許可がでるまでは循環動態をチェックしながら、頭部を15~30度ギャッチアップしベット上での深呼吸も促していきます。
手術内容にもよりますが、たいてい術後1日目には離床許可がでるでしょう。そしたら、ベッド上での座位→端座位→歩行と段階的に離床を行っていきます。
また、術前だけ使用すると思われがちなトライボールなどの呼吸訓練器具を使用していくことで、効率よく肺の拡張を促すことができます
医師やリハビリと情報を共有しながら早期離床を促していきましょう。
関連記事排痰への援助
無気肺の原因となる痰をためないようにすることが大切。
超音波ネブライザーを行って痰を柔らかくした後に、強く咳をして排痰を促します。痛いので、創部に軽く手を置いて傷み刺激を抑えながら行うように説明しましょう。
なかなか出せない場合は、体位ドレナージやスクイジング、ハフィングを屈指して痰の喀出を促していきます
疼痛コントロール
そもそも、無気肺を予防するための離床や深呼吸、排痰も疼痛によって妨げられてしまうためコントロールすることが重要です。
離床が進まないようであれば、その前に鎮痛薬を投与して効果がでている状態で離床を行っていきましょう。
やっぱり早期離床って大事なんですね。
そして、術前からリスクの評価をして他職種と連携しながら予防的介入をすることが重要だから覚えておいてね。