このページでは、周手術看護をするなら知っておきたい術前・術後の看護のポイントについてまとめてあります。
術前~術後の流れがイメージできるようになってますので、ぜひ新人看護師さんや部署異動になった看護師さんは参考にしてみてください。
Contents
術前看護のポイント
- 手術の流れが具体的にイメージでき不安が軽減できる
- 術後合併症のリスクを評価し、可能な限り最適な状態で手術に臨むことができるようにする
これらを目標とし、他職種と連携して関わっていくことが重要になります。
手術決定〜前日まで
術前オリエンテーション
患者さんは様々な不安を抱えながら手術に臨みます。不安を軽減するためにも、手術の流れを具体的にイメージできる術前オリエンテーションは重要な役割となります。
ただ、オリエンテーションだからと上から順に説明するだけではダメ。なぜ必要なのか?を具体的に説明し、患者さんや家族の理解度を確認しながら行う必要があります。
関連記事術前検査
患者さんの全身状態を把握し、術中や術後に起こりうる合併症のリスクを評価するために術前検査を行います。
・血液検査
・肺機能検査
・心エコー
・レントゲン
・心電図
リスクがあれば他科にコンサルトも必要になります。
関連記事呼吸訓練
全身麻酔による手術では、呼吸器合併症を予防する目的で術前より呼吸訓練の指導を行います。
・禁煙の説明
・呼吸訓練器具の使用方法
・深呼吸の練習
・痰の出し方
内服薬の休薬や継続の確認
術前は抗凝固薬や抗血小板薬など休薬が必要となるものがあります。
また、手術当日には指示された内服薬のみ服用するので、医師の指示を確認し患者さんに説明します。
術前処置
手術部位感染の予防のために臍処置や入浴などを行います。
下剤は手術内容によって不用な場合もありますが、大腸の手術などのように厳密に行う場合もあります。
術前訪問
手術室看護師が入室から退室までの流れを患者さんに説明します。
麻酔科医の術前診察は、患者さんの現病歴や生活習慣、身体所見、術前検査などの情報をもとに麻酔計画を立てます。
手術当日の流れ
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点滴開始医師の指示通りに点滴を開始します。
禁食や不感蒸泄などにより血管内に水分が不足していると、麻酔導入時に血圧低下を起します。そのため、体液の喪失に対する輸液を手術前に投与します。
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最終飲水チェック基本的には手術の2時間前まで水分摂取ができます。時間になったら最終飲水を何時にしたのかチェックします
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着替えと装飾品の除去手術着に着替え、装飾品や入れ歯など外せるものは外してもらいます。
弾性ストッキングはDVTリスクの評価に基づいて必要時着用します。
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術前抗菌薬の投与私の病院では入室30分前に抗菌薬の投与がルーチンですが、施設によっては入室後に投与する場合もあります。
抗菌薬投与によるアレルギーチェックを忘れずに観察しましょう。
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最終バイタルサインのチェック入室前に最終バイタルサインのチェックをします。緊張から血圧が高くなる人が結構いるので、深呼吸を促て測定しましょう。
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手術室へ入室と申し送り患者さん家族とともに手術室まで向かいます。
患者さんは「いよいよか…」と緊張しているので、声かけやタッチングをして不安をほぐすように送り出しましょう。
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術後ベッドと帰室部屋の準備術後ベッドを準備し手術室にもっていきます。
帰室部屋は、酸素や吸引、モニターやポンプ類など万全な状態で受け入れられるように準備します
術後看護のポイント
- 起こりうる合併症を予測しながら早期回復に向けた支援を行う
術後は、患者さんの状態が日々変化していきます。侵襲によって受けたダメージから体がどのように変化し回復していくのかを理解しておく必要があります。
関連記事その過程の中で、起こりうる合併症を理解し早期発見することが術後の看護では重要になってきます。
術後のバイタルサイン
術直後は呼吸、循環動態が特に不安定な時期です。侵襲が大きい手術ほど生体反応も大きくなるため、バイタルサインの変動も大きくなります。
術後のバイタルチェックの間隔は?
術後1時間までは15分おきに。術後2時間までは30分おき。その後は2~3時間おきにチェックしていきます。
ただし、施設によって違いはあり。
麻酔の覚醒状態
帰室直後は「声かけに開眼するか」「声が出せるか」「指示動作が行えるか」など、麻酔の覚醒状態を評価します。もし、声が出せれば気道が開通している指標となります。
循環動態
術後は容易に循環動態が変動します。
疼痛や不安など様々な要因によって血圧が上昇し、術後出血・頭蓋内出血・心筋虚血を起す可能性があります。
逆に、術後出血や術中の水分損失などの影響により循環血液量が減少すると血圧が低下し、臓器灌流低下、循環血液量減少性ショックに陥ります。
また、心房細動などの不整脈も出現しやすいためモニタリングが重要です。
・術前からの血圧と比較して20%内の変動が理想
・MAP65mmHg以上
・尿量0.5ml/h/kgの流出
体温
術後に発熱することはよくありますが、それが「手術侵襲による生体反応なのか?」「感染によるものなのか」を観察しアセスメントする必要があります。
また、術直後は術中の体温低下やセットポイント上昇によりシバリングを起すこともあります。侵襲が大きい手術ほど起きやすく酸素消費量が増大するため、シバリングがみられたら保温と疼痛コントロールを行いましょう。
関連記事呼吸状態
術直後は麻酔や筋弛緩薬の残存による呼吸抑制や気道閉塞から低酸素血症が起きやすくなります。特に、気道閉塞などのトラブルでは再挿菅になることもあるので注意が必要です。
また、無気肺も術後早期から起きやすいので肺を拡げて換気を促し排痰への援助も重要になってきます。
疼痛管理
術後の疼痛は自制内が目標です。
疼痛コントロール不良により交感神経が刺激され血圧の上昇や不整脈を起こしたり、呼吸機能も低下し無気肺などのリスクが高まります。
PCEAやIV-PCA、NSAIDsを使用しながらNRSやフェイススケールで評価していきましょう。
関連記事ドレーン管理
手術によっては様々な部位にドレーンが留置されてきます。
「なぜその部位に挿入されているのか」「排液の正常と異常」「ドレーンの固定と管理」について理解しておく必要があります。
関連記事・腹腔ドレーン②排液について〜正常を知らなきゃ異常もわからない〜
その他の観察ポイント
腸蠕動音の確認
全身麻酔の手術は一時的に消化管運動が抑制さられ腸蠕動音の減弱や消失が起きます。
消化器の手術であったり、麻薬性の鎮痛剤を投与していたりすると、回復が遅延するので蠕動音の観察も重要なポイントです。
術後悪心・嘔吐
全身麻酔後によくある術後の悪心・嘔吐(PONV)
PONVを起しやすい人には特徴があると言われており、術前からそのリスクを評価し事前に対策をしていきます。
制吐薬を使用して対応しますが、痛みより辛かったという患者さんも多い
・PONVってなぜ起きるの?原因や対策について知っておこう。
術後合併症
術後合併症を予測して異常の早期発見をするためには、起こりやすい時期や観察のポイントを理解しておく必要があります。
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