「手術当日は、テルミサルタンのみ中止してください」
このように、なんでARBやACE阻害薬は術前に中止になることがあるのか疑問に思ったことありませんか?
今回は、術前にARBやACE阻害薬を中止する理由について解説していきたいと思います。
ARBやACE阻害薬ってどんな薬?
そもそも、どのような作用によって血圧を低下させる薬剤なのか理解しなければ中止にする理由もわかりませんので、少し解剖生理の話しましょう
腎臓の糸球体からレニンが分泌されると、アンジオテンシノーゲンがアンジオテンシンⅠに変換されます。アンジオテンシンⅠは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンⅡに変換し、受容体に作用することで血圧が上昇します。
このレニンアンジオテンシン系の働きを抑えて血圧を低下させる薬剤が
- ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
- ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
ということです。
術前にARBやACE阻害薬を中止にする理由
術中は、麻酔の血管拡張作用や出血によって容易に血圧が低下します。
手術室に勤務したことがあればわかると思いますが、麻酔導入前は120/78だった血圧が麻酔導入後に60台へと一気に低下するこもあるくらいです。
血圧低下が起きると、私達の体は血圧を上げて恒常性を維持しようと代償作用が働きます。
その代償作用がレニンアンジオテンシン系。
関連記事:つまり、ARBやACE阻害薬を手術当日に内服するとレニンアンジオテンシン系の働きが効かず、術中に過度な低血圧を起こすリスクがあるため手術当日は中止にするのです。
ARBの添付文章にも
・手術前24時間は投与しないことが望ましい
と記載されています。
必ずしも術前に中止にするとは限らない
手術当日に内服を中止すれば、術中の低血圧リスクを少なくすることができますが、逆に術後早期に高血圧になるリスクもあります。
特に、臓器保護作用により心不全がある場合などは継続したほうがいいとも言われていますので、最終的には主治医や麻酔科医が患者さんの全身状態を把握したうえで判断することになります。
うちの麻酔科医も当日内服させることもあるからね。
覚えておいて損はないと思いますよ。