消化器の術後で気をつけなくてはいけない合併症である縫合不全
今回はの内容は…
- 縫合不全はどんな患者さんが起きやすいのか?
- 早期発見するための観察のポイントは?
について解説していきたいと思います。
消化器外科に移動になった看護師さんや新人看護師さんは必須ですよ。
術後の縫合不全とは?
縫合不全は消化管の吻合部が何らかの理由によって癒合せず、一部もしくは全開して消化液が腹腔内に漏れ出してしまう状態。
術後7日以内に起きやすく、食事を開始してから起こることもあります。
縫合不全を起こすと腹膜炎から敗血症、多臓器不全と重篤な状態に陥ってしまう可能性があるため早期発見が重要になります
縫合不全のリスク因子
<患者さん因子>
- 低アルブミン
- 低栄養状態
- 糖尿病で血糖コントロールが悪い
- ステロイドの長期投与
低栄養だったり血糖コントロールが悪いと傷の治りも悪いですよね?だから術前から栄養状態の評価や血糖コントロールが大切になります。
<局所的な因子>
- 血流障害
- 浮腫
- 感染
- 消化管内圧の上昇
創部の治癒には血流が不可欠です。縫合部にテンションがかかりすぎとしまうと、血流障害を起こして縫合不全のリスクになります。
消化管内圧の上昇は事例のところで説明しますが、腸管内容物の前処置が不十分だったりすることで吻合部の圧が高まってしまいます。
<術式による因子>
- 胃全摘手術
- 食道切除、再建術
- 膵頭十二指腸合併切除術
- 低位前方切除術
食道や直腸の手術は術後の縫合不全リスクが高いと言われています。
縫合不全と観察ポイント
縫合不全を早期に発見するために看護師は何を観察すればいいのか?についてみていきましょう。
ドレーンの排液の変化
まず、これが1番大切。
通常であれば術後の経過に伴いドレーンの性状は
「淡血性→淡々血性→漿液性」
と変化していきますが、性状が「なんかいつもと違う?」と思ったら要注意です。
例えば…
・直腸の術後
吻合部やダグラス窩ドレーンの性状が便汁様に変化し便臭がする
・胃全摘の術後
左横隔膜下やウィンスロー孔ドレーンの性状が胆汁や腸液などが混ざって混濁する
・胆嚢摘出の術後
モリソン窩やウィンスロー孔ドレーンの性状が胆汁様に変化する。排液がドロッとして粘稠性がある。
・腹腔ドレーン②排液について〜正常を知らなきゃ異常もわからない〜
身体所見
ドレーンの排液と合わせて身体所見も観察します。
<バイタルチェック>
発熱、頻脈、血圧低下、呼吸数増加
<腹部症状>
腹痛、悪心嘔吐、筋性防御、反跳痛、腸蠕動音の減弱
もし縫合不全を疑ったら…
ドレーン性状の変化や発熱、腹痛などの症状があれば早期に医師に報告し検査を行います。
- 採血にてWBCやCRPの上昇
- ドレーンアミラーゼのチェック
- 透視下で造影剤の消化管外への漏出
などを確認して診断していきます。
既に挿入されているドレーンにて消化液がドレナージできていれば、そのまま絶飲食にして経過を見ることもありますが、そうなると長期戦なのでCVを挿入してTPN管理になります。もちろん抗菌薬も投与。
ドレナージが効いていることが重要なので、閉塞したり抜けたりしないようにドレーン管理が超超〜重要です
ドレナージが不良であったり腹膜炎を併発している場合などは再手術となります。
縫合不全を起こした事例
直腸癌にて腹腔鏡下低位前方切除術
術後1日目〜頻回の便意があり何度もトイレに行き水様便があった。その後、発熱とともに腹痛の訴えがありドレーンは便汁様に変化していた。
吻合部の縫合不全によって腹膜炎を起こし緊急手術となり人工肛門を一時的に造設。
それ以外にも、壊疽性胆嚢炎の術後2日目にドレーンの性状が淡々血性から粘稠性の胆汁に変化して胆汁漏を起こしてしまったこともありました。
まとめ
縫合不全は7日以内に起きやすい。
- ドレーンの性状を観察すること(なんかいつもと違うが大事)
- 腹痛や発熱、腹膜刺激症状などを合わせて観察すること
これが術後の縫合不全を早期発見するうえで重要なポイントですので、正常をしっかり理解して観察していきましょう。