術後の合併症の1つであるイレウス(腸閉塞)
起きやすい時期を理解して観察しなければならないし、予防するためにはどういった看護が必要になるのか理解できるからね
ということで、今回は周手術期の看護するなら絶対に知っておかなくちゃいけない術後のイレウスについて、なぜ起きるのか?起きやすい時期はいつなのか?などについて解説していきたいと思います。
消化器外科の看護師さんは必須ですよ。
術後イレウスはなぜ起こるのか?
じゃあ、この2つがなぜ起きるのかわかる?
まずは、なぜ起きるのかを?原因について簡単におさらいしようか
麻痺性イレウス
術後は、全身麻酔や手術による機械的刺激、術後の安静や疼痛など様々な侵襲が原因となり、一過性に腸管の動きが抑制されてしまいます。
これを術後腸管麻痺といい、生理的イレウスとも呼ばれています
通常であれば48~72時間以内には腸蠕動が再開して排ガスが確認できるようになるのですが、72時間を超えても腸管麻痺が回復せずに遷延してしまうのが麻痺性イレウス。
問題となるのは消化器の手術。特に開腹で腸を切除するような侵襲が大きい場合には注意しなければならないんだ
つまり、麻痺性イレウスは…
手術侵襲による腸管麻痺が回復しない状態のこと
癒着性イレウス
開腹や腹腔鏡下などの腹部領域の手術では、腸管同士や腹壁と腸管がくっついたりと大なり小なり癒着が起きます。
そして、ビックリすることに癒着は術後3〜6時間で完成されると言われています。
癒着した部分の腸管って狭くなってしまうからそこに食べ物などの消化物が詰まると、後から流れてきたものもどんどん詰まってしまい渋滞になっちゃうんだ。
これが癒着性イレウス
癒着性イレウスのほとんどが小腸の通過障害であり、詰まってしまっている部位の口側の腸管が拡張します。
そして、癒着による通過障害だけでなく血行障害も伴うのが絞扼性イレウス。この場合は、腸管が壊死してしまうので緊急の手術が必要になります。
術後イレウスは何日目に注意するべきか?
<麻痺性イレウス>
- 腸管麻痺が術後42〜72時間以上経っても続くようであれば麻痺性イレウス
- 消化器の手術で起こりやすく、特に開腹手術で腸管を切除する場合はリスクが高い。
ということで、麻痺性イレウスは…
消化器系の術後2〜3日目から注意
私の経験では、整形外科の術後とかは帰室してから2〜3時間くらいで腸蠕動が確認できる。けど、開腹手術で腸管を切除したり、腹膜炎を併発しているようなときは術後24時間を超えても、排ガスが確認できないことはよくある。
<癒着性イレウス>
- 癒着は術後3〜6時間で完成されてしまう。
- 腹部領域の手術では大なり小なり癒着が起きる
ということで、癒着性イレウスは…
腹部領域(特に開腹手術)の術後早期〜退院後も
この前の癒着性イレウスを発症した患者さんは術後7日目でしたし、食事を開始してから発症する場合もあります。逆に全く症状がなく経過する場合もありますし、術後数ヶ月〜数年してから発症することもあります。
こればかりは神のみぞ知ると言っても過言じゃないでしょう。
麻痺性or癒着性イレウスはどう判断するの?
- 腹部膨満感
- 悪心、嘔吐
- 排ガスや排便の消失
- 腸蠕動音の減弱、または消失
- 小腸、大腸全体的なガス像
- 腹部膨満感
- 悪心、嘔吐
- 排ガスや排便の消失
- 間欠的な腹痛
- 腸蠕動音の亢進、金属音
- 閉塞部位より口側の腸管拡張
麻痺性イレウスは腸管の動きが止まってしまっているので蠕動音は弱いか聞こえなくなります。
一方で癒着性イレウスは詰まっている部分より肛門側の腸管運動は低下し口側は活発になるため蠕動音は亢進し金属音が聞こえます。
腹部XPやCTでは、麻痺性イレウスは小腸や大腸全体的にガス像がみられます
癒着性イレウスは閉塞部位より口側の腸管が拡張し、液体貯留も多いので立位ではニボーがみられることも多いのが特徴です。
ただ、術後にどっちのイレウスかと判断するのは難しいらしく麻痺性かと思っていたが、実は癒着性だったなんてこともあると外科医も言ってました。
急激な腹痛や腹膜刺激症状があるようなら絞扼性イレウスの可能性もありますので覚えておきましょう
術後イレウスを予防するための看護
腸管運動を促進させる
とにかく腸管の動きを回復させるために早期離床がめちゃくちゃ大切です。
循環動態が安定していれば、どんどん離床を勧めて病棟内を歩いてもらいましょう。歩けない患者さんはリスクが高いので、ベッド上で膝の曲げ伸ばしや車イスへの乗車を積極的に行ってください。
腸管を動かすために点滴内にパントールを追加することもあります。
疼痛コントロール
痛みによって交感神経が刺激されると腸管の動きが悪くなるし離床遅延にもなるので、疼痛をコントロールをすることも重要です。
Epiでコントロールできていればいいのですが、それでも離床が進まない場合には追加で鎮痛薬を投与して効果がでてきたあたりで歩行を促したりします。
時にはスパルタになることも必要ですよ。
早期発見
腸管の動きが戻ってきているかどうか、腹部膨満や蠕動音の有無、排ガス排便の有無などをレントゲンの所見と合わせて観察することが大切です。
また、経口摂取を開始した後に術後イレウスを引き起こすこともあるので、食事開始時は特に注意して観察することも必要です。患者さんが売店でこっそり何かを食べていたなんてこともありますし、患者さんへの指導も大切ですね。
口から食べてしっかり排便がある。これが重要
事例
◯◯歳 男性 上行結腸癌で右半結腸切除術。
~術後1日目~
・腹部膨満あり
・腸蠕動音も減弱、悪心嘔吐はなし。
・胃管からの排液は100mlほど
・腹部XPでは小腸ガスあり
禁飲食のままで、術後の腸管回復を促すために早期離床へ。Epiで疼痛コントロールしながら歩行訓練開始。胃管は抜去。
~術後3日目~
・腹部膨満あり、鼓腸。
・腸蠕動音も減弱
・腹部XPでは変わらず小腸ガスが目立つ
・排便、排ガスなし
術後3日目になっても蠕動運動は確認できずに術後腸管麻痺の状態。離床は促しており病棟内も歩行できている。点滴内にパントール追加。
~術後5日目~
・腹部膨満はやや軽快
・排ガスと泥状の排便が少量あり
~術後7日目~
間欠的な腹痛と嘔吐が出現しNGチューブ再挿入。腹部XPやCTでは小腸ガス多くニボー形成あり。閉塞部位の同定翌日にはイレウス管を挿入し低圧持続吸引開始。その後、腸管拡張が改善しガストロ造影にて大腸まで造影剤の流出ありイレウス管抜去。
以前経験したことのあるような症例をフィクションで再現してみました。
まとめ
まとめると…
術後のイレウスは消化菅に侵襲が加わらないような術式では大きな問題にならない。
腹部領域の手術で特に開腹術後は注意が必要。
そして…
麻痺性イレウスは術後⒉~3日目から
癒着性イレウスは術後早期~退院後も
この時期に起きる可能性があることを念頭において観察しなければなりません。
癒着性イレウスは退院してから起きる場合もあるので、いつ起こるかわからないし再発を繰り返すことも多くあります。
これらのイレウスを予防するためには、疼痛コントロールをしながら早く腸管の動きを回復できるようにすること、つまり早期離床が重要になります。